Parisii パリシーは時を越え古代ギリシャ・ローマ世界と出会うギャラリーです。
2000年以上前の古代ギリシャ、古代ローマ時代に実際に使われた大変貴重な貨幣(古代ギリシャコイン、ローマコイン、ケルトコイン)を専門に販売しています。
作品の選定には歴史的価値・芸術的価値に重きを置き、厳選に厳選を重ねております。
過去に販売した作品、当ギャラリーのコレクション等も、古代コイン図鑑として年代順に掲載させて頂いておりますのでご参照下さい。
また古代ギリシャ・ローマ世界に関連するアンティーク作品等も販売しております。こちらもお楽しみ下さい。

古代ローマコイン 共和政期 前82年 デナリウス銀貨 マミリウス・リメタヌス メルクリウス肖像 オデュッセウスと忠犬アルゴス 『オデュッセイア』に関連するローマコイン

古代ローマコイン 共和政期 前82年 デナリウス銀貨 マミリウス・リメタヌス メルクリウス肖像 オデュッセウスと忠犬アルゴス 『オデュッセイア』に関連するローマコイン

作品詳細

古代ローマコイン 共和政期 ガイウス・マミリウス・リメタヌス デナリウス銀貨

前82年、ローマ発行

オモテ:右向きのメルクリウス神肖像 肖像の後ろにカデゥケウス(メルクリウスの杖)

ウラ:C MAMIL LIMETAN (Caius Mamilius Limetanus ガイウス・マミリウス・リメタヌス)
オデュッセウスと愛犬アルゴス

サイズ:3,67g 18mm

ホメロスの『オデュッセイア』のオデュセウスと愛犬アルゴスの再会の場面が表された、古代ローマ共和政期のデナリウス銀貨。
『オデュッセイア』の第17歌でオデュセウスは故郷で、すでに年老いてしまった自身の愛犬アルゴスに再会する。この時、オデュッセウスは乞食に変装していたがアルゴスは主人だと見分ける場面がある。

以下、『オデュッセイア』の第17歌より抜粋。
このように二人は語り合っていたが、この時その場に横になっていた犬が、頭と耳をもたげた。これぞ忍耐強きオデュッセウスの飼犬であったアルゴスで、かつて自らてがけて飼い養った犬であったが、愛でて楽しむ暇もなく、聖なるイリオスへ出征したのであった。昔は若者たちが、野生の山羊や鹿、兎などを狩るのに連れて行ったものであったが、主人が出征した後は、世話をする者もなく打ち捨てられて、今はオデュッセウスの下僕らが、広大な王領の田畑に施すようにと、門戸の前に堆く積まれた、騾馬や牛の糞の山に埋もれて横たわっている。
このように犬のアルゴスは、犬だにに塗れて寝ていたが、この時近くに立つオデュッセウスの姿に気付くと、尾を振り両耳を垂れたものの、もはや主人に近づいてゆく力はなかった。オデュッセウスはエウマイオスに気付かれるのを巧みに避け、顔を背けて涙を拭うと、間を置かず問いかけていうには、
「エウマイオスよ、この犬が糞の山の中で寝ているとは、なんとも解せぬことじゃ。実に見事な姿をしているが、果たしてこの姿に相応しく脚も速かったのか、それとも飼主が見栄のために養う、食卓用の犬の類いに過ぎぬのか、わたしにはよく判らぬが。」

彼に答えて豚飼のエウマイオスよ、おぬしはこういったな、
「いかにもこの犬は、遠国で果てられたお方の飼犬じゃ。もしこの犬がその姿もその働きも、オデュッセウスの殿がトロイエに向われる時、置いてゆかれたままであったなら、おぬしもその駿足と力とを見て、肝を潰すに違いない。深い森の中でも、この犬に追われては、逃がれおおせる獣はなかった。獣の足跡を嗅ぎつける勘の良さも抜群であった。それが今は哀れな身の上で、主人は異国で亡くなるし、気の利かぬ女どもは、世話をしてやろうともせぬ。召使いというものは、取り締まる主人がおらぬようになると、もはやまともに働こうとはせぬものじゃ。人間はいったん奴隷の身に落とされると、遥かに見晴かすゼウスが、その優れた天分の半ばを取り上げてしまわれる。」
 こういうと豚飼は、見事な構えの屋敷の中に入り、尊大な求婚者たちのたむろする広間に向ったが、犬のアルゴスは、二十年ぶりにオデュッセウスに再会すると直ぐに、黒き死の運命の手に捕えられてしまった。
(ホメロス 「オデュッセイア 下」松平千秋訳 岩波文庫 P132-134)