Parisii パリシーは時を越え古代ギリシャ・ローマ世界と出会うギャラリーです。
2000年以上前の古代ギリシャ、古代ローマ時代に実際に使われた大変貴重な貨幣(古代ギリシャコイン、ローマコイン、ケルトコイン)を専門に販売しています。
販売作品の選定には歴史的価値・芸術的価値に重きを置き、厳選に厳選を重ねております。
古代コインを年代順にご覧になりたい方は古代コイン図鑑もご参照下さい。
また、古代ギリシャ・ローマ世界に関連するアンティーク作品等も販売しております。こちらもお楽しみ下さい。
なお、お問合せはホームページ右上のお問合せフォームよりお願い致します。

このページでは古代ギリシャ、ローマを題材にした文学などをランダムに紹介していきます。


・ヨシフ・ブロツキー 『大理石』 沼野充義訳 白水社


1984年に出版された、ロシアの詩人ヨシフ・ブロツキーによる戯曲。
塔に収容された2人のローマ帝国の囚人が織りなす対話劇。
作品の時代設定は、「われられの紀元の終末後2世紀」と未来に置いているが、作品の空間設定は、ローマ帝国に置かれ、ティベリウスやカリグラ、数々のローマ詩人の名が登場する、アナクロ(時代錯誤)設定となっている。
戯曲は初めから終わりまで、ローマ帝国の刑務所の1室での、囚人たちの会話のみで展開される。
著者は、歴史上最大の領土を有したローマ帝国、つまり最も大きな空間という大枠の中の刑務所という、最も狭さを感じる空間を舞台設定にすることで、人間がいかに「空間」に縛られた存在であるかを意図している。
2人の囚人の対話はユーモアに富み、「空間」、「時間」に縛られた人間の存在を浮き彫りにさせる。この束縛から自由になるためには「詩」が1つの手段であることが示されるが、平凡な人間にはそれは難しい。人間は孤独な存在であることを実感させられる名作。




・正宗白鳥「アントニーとクレオパトラ」『正宗白鳥全集 第十八巻』 福武書店


正宗白鳥が1932年に発表した戯曲「アントニーとクレオパトラ」は『正宗白鳥全集 第十八巻』に掲載されている。
2幕構成の小作品。
1幕目は、アクティウムの海戦に敗れた、失意のアントニウスが隠居している別邸に、アントニウスが最も信頼を寄せるアレキサスが訪ねてくる。アレキサスはアントニウスにクレオパトラを裏切るように説得するがアントニウスはこれを拒む。
2幕目は、クレオパトラの宮殿が舞台。毒蛇の効果を奴隷で試しているクレオパトラのもとにアントニウスが会いに来る。
2人は死に様について各々の理想を語り酒杯を交わすが、アントニウスのもとに使者がやってきて、アレキサスが裏切りアレクサンドリアを発ったことが知らされる。
友人にも捨てられたアントニウスは、酒宴を続けようと誘うクレオパトラについていき幕となる。



・シェイクスピア 『アントニーとクレオパトラ』 松岡和子訳 ちくま文庫


『アントニーとクレオパトラ』は1607年頃に書かれたシェイクスピアの戯曲。
西洋古代史上最も有名なカップル、古代ローマの将軍アントニウスとプトレマイオス朝エジプト最後の女王クレオパトラの恋愛悲劇。
物語は、前42年のフィリッピの戦い以後、アントニウスとオクタウィアヌスの同盟に亀裂が入り始めた時期に始まり、アクティウムの海戦でアントニウスとクレオパトラが敗北し自害するまでが語られる。
本作品は、恋に溺れるアントニウスとクレオパトラのロマンティックなセリフが堪能できるのはもちろんだが、
時の流れをも支配する男オクタウィアヌスと愛に支配される男アントニウス、2人の男の対比も面白い。



・ソートン・ワイルダー 『三月十五日 カエサルの最期』 志内一興訳 みすず書房


アメリカの作家ソートン・ワイルダーの『三月十五日 カエサルの最期』(原題:The Idea Of March,1948)は、古代ローマのユリウス・カエサルが暗殺される日(前44年3月15日:The idea Of March)までの約1年間の物語である。
本作は書簡形式をとっており、カエサル、クレオパトラ、ブルートゥス、キケロなどの架空の手紙によって、古代ローマ共和政終焉時の重要人物たちの心情が吐露される。
この作品で私たちは、歴史により超人というイメージを持たされたカエサルではなく、同じ生身の人間としてのカエサルに出会うことができる。
書簡という形式ゆえに言葉が胸に刺さりやすく、まるでカエサルと対話しているかのような感覚が楽しめる。
また、ローマ史上屈指の悪女のレッテルを張られたクローディア、彼女に狂おしい恋をする詩人カトゥルスの実際の詩も交えた愛の書簡の再現も生気に満ちこの上なく美しい。



・クリストフ・ランスマイアー 『ラストワールド』 高橋輝暁/高橋智恵子訳 中央公論社


『ラストワールド』は、オーストリアの作家クリストフ・ランスマイアーによる、古代ローマ、アウグストゥス帝時代の詩人オウィディウスの「変身物語」を原典にしたファンタジー小説である。
詩人オウィディウスは史実上、アウグストゥス帝に追放され、辺境の黒海の地で客死した謎の人物だ。
アウグストゥスが、なぜオウィディウスを追放したかはわかっておらず、古代ローマ史のミステリーの1つとされる。
この小説はその史実を踏まえ、ある1人のローマ人が、追放されたオウィディウスを探しに辺境の黒海の町へと旅する話である。
主人公のローマ人コッタは、オウィディウスを追い求める途中、様々な登場人物たちと出会い対話する。
登場人物たちは皆、オウィディウスの「変身物語」や古代ギリシャ・ローマの神話や伝説に由来し、さらにランスマイアーの独自の世界観が加わった謎めいた魅力的な人々である。
主人公は登場人物たちの変身を目撃し、さらには自分自身も変身を遂げていく。
登場人物たちの変身、空間の変化を綴るランスマイアーの美しい言葉の力は、世界の輪廻転生を想起させ、読み手を快楽へと導く。



・ラシーヌ 「ブリタニキュス」『ブリタニキュス ベレニス』渡辺守章訳 岩波文庫


「ブリタニキュス」は17世紀のフランスの劇作家ジャン・ラシーヌの古代ローマ皇帝ネロを題材にした悲劇。
いかにして暴君ネロが誕生したかがテーマで、ラシーヌ自身はこの作品を「怪物ネロの誕生」と説明した。
ネロが母アグリッピナと決別し、最初の殺人行為、義理の弟ブリタニクス毒殺に至るまでのストーリーは、タキトゥスの『年代記』に基づくが、創作でブリタニクスの恋人として、架空の女性ユリアが登場する。
ネロのユリアへの叶わぬ恋が、ネロを狂気へと導く。

「ベレニス」も同書に収録されている。
「ベレニス」は古代ローマ皇帝ティトゥスとユダヤの女王ベレニケの恋愛悲劇。
父帝ウェスパシヌスの亡き後、皇帝の座についたティトゥスは、理想のローマの統治者を目指し、異国の女王ベレニケとの恋愛に終止符を打とうとする。
ティトゥスとベレニケは狂おしい恋の情念に揺さぶられ、身を滅ぼしそうになるが、女王は皇帝のために痛わしい決断を下す。


・アルベール・カミュ 『カリギュラ』 岩切正一郎訳 ハヤカワ演劇文庫


アルベール・カミュが古代ローマ皇帝カリギュラを題材に、世の不条理について書いた戯曲。
カリギュラが実の妹ドルシラをこよなく愛していたという史実を踏まえた作品である。
最も愛した女性、ドルシラが死んだ後、孤独となったカリギュラが主役となって劇は展開する。
カリギュラはローマの統治者として仲間に囲まれているが、ドルシラの死により、人間としては孤独である。
カリギュラはこの不条理に真っ向から立ち向かうため、周囲は彼を狂人と呼ぶ。
誰しも人間の中にはカリグラが潜んでいることに気づかされる感慨深い作品。



・テオフィル・ゴーチェ 「ポンペイ夜話」『死霊の恋/ポンペイ夜話』田辺貞之助訳 岩波文庫


テオフィル・ゴーティエのポンペイ遺跡を題材にした、傑作幻想小説「ポンペイ夜話」(原題:Arria Marcella ou Souvenir de Pompei,1852)は読み手を古代ポンペイの幻想へと誘う。
ストーリーはフランス青年オクタヴィアンが、ポンペイで発掘された女性の胸の押型と博物館で出会うところから始まる。
オクタヴィアンはこの女性の遺物に一瞬で心奪われ、はるか昔にポンペイ噴火で亡くなったこの女性へ思いを募らせる。
不可思議なことに、ある夜オクタヴィアンは、在りし日のポンペイへと誘われ、博物館で見た押型の女性、アッリア・マルチェッラと出会い2人は熱烈な愛にもだえていく。


・テオフィル・ゴーチェ「クレオパトラの一夜」 「金の鎖、またはもやいの恋人」 『フランス幻想小説 魔眼』小柳保義訳 現代教養文庫


「クレオパトラの一夜」(原題:La nuit de cleopatre,1838)はテオフィル・ゴーティエによる、プトレマイオス朝エジプト最後の女王クレオパトラをヒロインにした幻想小説。
晩年のクレオパトラはアウグストゥスに滅ぼされるまで、恋人のアントニウスと「アミメトビオイ」(まねのできない生活をする人々)という会を結成して、絢爛豪華な宴会の日々を送ったというエピソードが残っているが、この小説もそのクレオパトラ最後の日々のある一夜を語っている。
女王としてのクレオパトラではなく、1人の女としてのクレオパトラの熱い恋が語れる。

「金の鎖、またはもやいの恋人」(原題:La Chaine d'or ou L'Amant Partagé,1837)も同書に収録されている。
この作品は古代ギリシャの2人の遊女、プランゴンとバッキス、美青年クテシアスによる恋の三角関係の話である。
3人の恋は、ある金の鎖を巡って騒動となるが、彼らはそれを乗り越え、固い鎖のような愛で結ばれれていく。


・ホルヘ・ルイス・ボルヘス 『幻獣辞典』柳瀬尚紀訳 スズキコージ絵 晶文社


アルゼンチンの作家、ホルヘ・ルイス・ボルヘスによる古今東西の空想動物に関する書物。
邦題は幻獣辞典ではあるが、作品の内容は、様々な空想動物がエッセイ形式で語られる。
古代ギリシャ神話の幻獣(ケンタウロス、スフィンクス、ケルベロス、etc)についても多数掲載されている。
迷宮の作家ボルヘスを通して語られる幻獣たちは実に魅惑的で空想の世界へと引き込まれていく。


・ホルヘ・ルイス・ボルヘス 『夢の本』堀内研二訳 河出文庫


眠る時に見る夢にまつわる古今東西のエピソードが113編綴られた、楽しい書物。
カエサルの暗殺日、3月15日にまつわる夢や、スキピオの夢など、古代ローマ・ギリシャ関連も多数掲載されている。



・ロバート・グレーヴズ 『この私、クラウディウス』多田智満子・赤井敏夫訳 みすず書房


『この私、クラウディウス』(原題:I,Claudius,1934)は、イギリスの作家ロバート・グレーブズによる、古代ローマ、ユリウス=クラウディウス朝時代についての長編小説。
実際にエトルリア史やカルタゴ史を著した歴史家でもあった4代目皇帝クラウディウスが、もし自伝を残していたらという設定で書かれている。
カエサルの死後にアントニウスとオクタウィアヌスが覇権争いを繰り広げた時代から、カリグラが暗殺されクラウディウス自身が皇帝に推戴されるまでの歴史絵巻が、クラウディウスのユーモアに富んだ口調で語られる。
クラウディウスの祖母であった初代皇帝アウグストゥスの皇后リウィアが最強の悪女として物語の重要人物に設定されているところも特徴的だ。
続編にクラウディウスの皇帝時代が語られた作品、Claudius the God his Wife Messalinaも刊行されているが、こちらはまだ日本では翻訳されていない。