古代ギリシャコイン アッティカ地方 アテネ テトラドラクマ銀貨 前450年頃発行 古代コインで最も有名な意匠 アテナ神と聖鳥フクロウのコイン

古代ギリシャコイン アッティカ地方アテネ テトラドラクマ銀貨

前450年頃発行

表:オリーブの葉、花巻文様をあしらったヘルメットをかぶった右向きのアテナ神の肖像(技術・学芸・戦いの神)
裏:AΘE(アテネ) 右向きのふくろう(アテナ神の聖鳥)

サイズ:16,99g 21mm

アテネ位置

<アテネ>
ギリシアの首都。バルカン半島南東部アッティカ半島にあって、エガレオス(北西)、パルニス(北)、ペンデリコン(北東)、イミトス(東)などの山地に囲まれたアッティカ平野に位置し、南西はサロニコス湾に臨む外港ピレエフスに続く。
ギリシアの政治、経済、文化の中心地。
新石器時代以来人が住んでいたことは考古学的資料により知られるが、初期の歴史は明らかでない。
アクロポリスの丘を中心に発展したアテネは前8世紀頃までにはアッティカ地方のポリスとして成立し、貴族政治が行われた。
前6世紀には僭主ペイシストラトスとその息子たちのもとに繁栄。同世紀末クレイステネスにより民主制が確立。
前5世紀初めペルシア戦争に勝利してギリシアの指導的ポリスとなり、デロス同盟の盟主としてペリクレスのもとで古代民主制の最盛期を迎え、古典文化の中心地として数多くの哲学者、科学者、芸術家が輩出。
ペロポネソス戦争(前431-404年)でスパルタに敗れてからしだいに衰え、前338年カイロネイアの戦いでフィリッポス2世に敗れマケドニアの支配下に入った。

<アテネの貨幣発行>
およそ前520年頃に、アテネは初めてオモテ面がアテナ神、ウラ面がフクロウ(アテナ神の聖島)のテトラドラクマ銀貨を発行した。ウラ面にはアテネを意味するAΘEの文字。フクロウの頭上にオリーブの小枝。
後に、前490年のマラトンの戦いの勝利と関連してなのか、ウラ面のフクロウの横に三日月が加えられるようになった。
この頃のアテネの彫刻芸術は既にクラシック期を迎えていたが、貨幣意匠のスタイルにはアテナ神のアーモンド形の目に挙げられるようにアルカイック期の特徴が見受けられる。
前431年に始まったペロポネソス戦争中にアテネは大量のテトラドラクマ銀貨を発行し都市の貨幣経済と軍資金維持した。ギリシア・アッティカ地方にはラウリオン銀山があり、豊富な銀が採れたことから大量の貨幣発行が可能であった。

ラウリオン銀山地図、黒い四角が採掘場

しかし、前406年頃にはアテネの銀は枯渇しはじめたため、都市の商取引を潤滑にするために、銅に銀をメッキしたテトラドラクマが緊急に発行されることもあった。
そのメッキの貨幣は「緊急の貨幣」と呼ばれ、アリストファネス(アテネの喜劇作家)が前405年に初演した喜劇『蛙』の中の一節でこの貨幣のことが語られている。

アテネの喜劇詩人アリストファネス
「お金の中で一等の、正真正銘、ギリシアにあっても外国でも、あらゆるところで造られた、たった一つの立派な貨幣、これをばわれらは使わずに、銅の悪貨を使っている、
ついこのあいだ造られた、お金のなかでの最悪品、それと同じく、生まれ良く心正しく、道あやまらず、身心ともに立派な人々、運動競技、舞いに音楽に育てられたこの人々をないがしろにして、銅製異人、赤毛(トラキア人、スキュティア人特徴)の悪党の子の悪党ども、新参者でこれまでは市が案山子にさえも使わなかった人間どもをあらゆることに用いている。」(アリストパネス『蛙』高津春繁訳)
この一節でアリストファネスは、昔の貨幣が非常に質のよい立派なものであるにもかかわらず、これを使わずに、悪貨(銅に銀をメッキした貨幣)を用いているのと同じく、アテネは古くからの立派な市民を用いず、新参の素姓のよくない人間ばかり信用しているとアテネの現状を批判している。

アテネはペロポネソス戦争でスパルタに敗北(前404年)した後、コリントス戦争時(前395-387年)に一時経済力を回復し、新たにテトラドラクマ銀貨を発行した。
コリントス戦争以後のテトラドラクマ銀貨のアテナ神の肖像は、アルカイック美術様式のアーモンド形の目ではなく、写実的な輪郭の目をしている。

<アテナ神>
ギリシャ神話の女神。ゼウスと知恵の女神メティスの子。
メティスを最初の妻にしたゼウスは、彼女からやがて生れる男の子に自分の王位を簒奪される運命にあると知り、すでにアテナを妊娠していたメティスを腹に飲み込んでしまったところ、頭に陣痛を感じたのでヘファイストスまたはプロメテウスに命じ、斧で頭のてっぺんを割らせた。するとその割れ目から、武装した姿で飛出したのがアテナで、これによって彼女は戦いの女神であると同時に、知恵および技術万般を管掌することになった。
神話の中で彼女は特に英雄たちの近しい守護者として彼らを危難から救い、手柄をあげるのに必要な佑助を与える。
ポセイドンとアッティカ地方の支配権を争って勝ち、アテネ市の守護女神となったとされる。

コインオモテ面、アテナ神の兜にオリーブの葉の文様がある
オリーブはアテナ神の象徴。
アテナ神はポセイドンとアテネの支配権を争い、どちらが市民に役立つ贈り物をするかを競った。
ポセイドンは塩水の泉もしくは戦に役立つ馬を、アテナは実とオリーブオイルの採れるオリーブの木を贈った。
アテネの人々はアテナ神の贈り物を選び、アテナが勝利した。
このことから、オリーブの木は平和の象徴とされている。


<フクロウ>
「夜の猛禽類」としてワシ・タカと対をなす存在。
古代エジプトのヒエログリフでは夜・死を象徴する動物であった。
古代ギリシャでは夜目がきく聖なる動物とみなされ、知恵の象徴となり、女神アテナの聖鳥であった。
古代ギリシャの諺で「アテネにフクロウを届ける」というのがある。日本語の諺「蛇足を加える」、「釈迦に説法」に似ていて、「余計な事する」の意である。アリストファネスやキケロが盛んに使っていた諺である。

コインウラ面
フクロウの頭上にはオリーブの葉と実。オリーブはアテナ神の象徴であり、オリーブオイルはアテネの名産品であった。
古代ギリシャコイン アッティカ地方 アテネ テトラドラクマ銀貨 前450年頃発行 古代コインで最も有名な意匠 アテナ神と聖鳥フクロウのコイン