古代ケルトコイン ガリア・ハエドゥイー族(現フランス・ブリュゴーニュ地方) 前70-前50年 銀貨 カエサル『ガリア戦記』に登場するハエドゥイー族有力者ドゥムノリクスの銀貨

古代ケルトコイン ガリア・ハエドゥイー族(現フランス・ブリュゴーニュ地方) 前70-前50年 銀貨 カエサル『ガリア戦記』に登場するハエドゥイー族有力者ドゥムノリクスの銀貨
古代ケルトコイン ガリア・ハエドゥイー族 キナリウス銀貨

前70-前50年発行

オモテ:DVBNOCOV (ドゥムノリクス) 右向きの肖像

ウラ:DVBNOREIX(ドゥムノリクス) ガリア戦士の立像 右手にはカリュニクスとイノシシ、左手には切り落とされた人頭を持っている

サイズ:1,19g 14mm


カエサルの『ガリア戦記』に登場する、ハエドゥイー族のドゥムノリクスが発行した銀貨。
この人物はローマからの独立を目指していたため、カエサルにより殺された。
ウラ面にはガリアを象徴するガリア戦士が表され、右側のDVBNOREIX(ドゥムノリクス)の銘ははっきりと読み取ることができる。
戦士が左手に持っているのは人頭である、ケルト人は敵の首を戦利品として切り落とす、首切りの習慣があったことが歴史的、考古学的証拠から知られている。


右のデッサンはラ・トゥール著『ガリアコイン図表』(1892年)より


右のデッサンはラ・トゥール著『ガリアコイン図表』(1892年)より


(ハエドゥイー族)
ガリア・ケルタエ、現フランス、ブリュゴーニュ地方ニエーヴル県、ソーヌ=エ=ロワール県に居住していたケルト人。
ガリアの中で最も有力であった部族の1つで、カエサルの『ガリア戦記』の中に非常に多くの記述が残されている。

<カエサル『ガリア戦記』の中のハエドゥイー族に関する記述>
(前58年:1巻)
・陰謀を企て王座を狙うヘルウェティ―族のオルゲトリクスは、娘をハエドゥイー族の有力者ディウィキアクスの弟ドゥムノリクスと結婚させ、新たなガリアの支配者となろうと試みる。
・ヘルウェティ―族は、ローマのプローウィンキア(領土)となっていたアロブロゲース族の領土を通過しようとするが、カエサルにより阻止されたため、今度はセークァニー族の領土を通過しようとした。ヘルウェティ―族は、セークァニー族の同意を得るために、セークァニー族と親しいハエドゥイー族のドゥムノリクスを通してセークァニー族の領土を通過する許可をとりつけた。
・しかし、ヘルウェティ―族はセークァニー族の領土に入ると共に、ハエドゥイー族の領土にも入り略奪を行ったため、ハエドゥイー族はローマに援助を求めた。
・カエサルはハエドゥイー族からも兵を徴収し、ヘルウェティー族と戦うが、そのうちハエドゥイー族はカエサル軍に約束していた糧秣をとどこらせるようになった。この訳をハエドゥイー族の首領たちを集め問いただすと、ローマに忠実なディウキアクスの弟ドゥムノリクスが変革を望み、ローマ軍の動きを阻止しようとしていることがわかった。カエサルはディウキアクスを呼び、弟ドゥムノリクスの行動について問いただすも、ディウキアクスは涙ながらに赦しをこうたため、ディウキアクスに免じてドゥムノリクスを許したが、ドゥムノリクスに監視をつけた。
・カエサルがヘルウェティ―族との戦いに勝利した後、ガリアの部族の首領がカエサルの元に集まり会議が開かれた。そこではハエドゥイー族のディウキアクスが代表となってガリアの内情を説明した。ディウキアクスによれば、ガリアは2つの党派に分かれており、1つはハエドゥイー族派でもう1つはアルウェルニー族派であり、長年この2つの党派で激しく覇権を争ってきたという。アルウェルニー族やセークァニー族をゲルマン人の傭兵を多く雇い入れたのを契機に、ゲルマン人の移民が増えてしまい、今ではゲルマン人王アリオウィストスの脅威にさらされているため、ディウキアクスはカエサルに援助を求めた。
カエサルはハエドゥイー族とローマの友邦を守るために、今度はアリオウィストスとの戦いに入り激戦の末アリオウィストスは敗北した。

(前57年:2巻)
・カエサルはベルガエ人との戦いに入った。カエサルはベルガエ人のベロウァキー族を倒すために、ハエドゥイー族のディウキアクスに部隊をベロウァキー族の領土に進め、敵の部隊を分散させる指示を下した。
・カエサルがベロウァキー族を倒した後、ハエドゥイー族のディウキアクスはカエサルにベロウァキー族に慈悲を示すよう口添えしたため、ローマに600名の人実を出すことで交渉は成立し、ベロウァキー族の存続が認められた。

(前54年:5巻)
カエサルはブリタニア遠征出発に際して、ローマに充実なガリア人はガリアに残し、反乱を起しそうなガリア人はブリタニアに人質として連れていくことにした。その中の1人にハエドゥイー族のディウキアクスの弟ドゥムノリクスがいた。
ドゥムノリクスは特に要注意人物で、ガリア人の中で最も信頼されており、変革を好み、支配欲があったとカエサルは伝えている。
ドゥムノリクスはカエサルからハエドゥイー族の王権を授かったとの虚言をハエドゥイー族の会議で言いふらしたが、ハエドゥイー族はこれに対してカエサルになにも知らせてこなかったと述べている。
ドゥムノリクスはブリタニアに連れて行かれることを頑なに拒み、カエサルの知らない間に陣地から騎兵を連れて逃げたために、捕えられ殺された。

(前53年:6巻)
・カエサルはガリアの内情、風習について記述している。その中で、最初にカエサルがガリアに入った時(前58年)のガリアの勢力はハエドゥイー族とセークァニー族の2大派閥に分かれていたが、今ではセークァニー族の勢力は衰え、ローマと友好関係にあったレミー族の力が大きくなったという。
しかし引き続きハエドゥイー族の勢力はレミー族よりも勝っていたという。

(前52年:7巻)
・アルウェルニー族のウェルキンゲトリクスが大反乱に向け準備を整えていた頃、ハエドゥイー族はカエサルに使節を送り、ハエドゥイー族が最大の危機に瀕していることを報告した。
ハエドゥイー族では、昔から1りずつ首領が選ばれ、1年ずつ王権をとっていたが、2りのものが支配権を取り、それぞれが自分が正当であるという。1人が有力な若者、コンウィクトリタウィス、もう一人が名家出身の勢力も多い、コトゥスという人物であるという。
ハエドゥイー族の使節はこの2人の争いが長引けば、部族存続の危機となるためカエサルの助けをもとめた。
カエサルはハエドゥイー族の内紛に乗じてウェルキンゲトリクスが介入してくることを恐れ、すぐにハエドゥイー族の地にむかい、コトゥスを支配権から辞退させ、コンウィクトリタウィスに支配権を握らせた。
・カエサルはハエドゥイー族にガリアが平定された後には褒美が受け取れることを期待させ、穀物供給の守備を担う騎兵隊と1万の歩兵をカエサルの元に送るように指示した。

・ゲルゴヴィアでの戦いの最中、アルウェルニー族はハエドゥイー族のコンウィクトリタウィス、リタウィクスに近づき、仲間に引き入れることに成功した。カエサルの騎兵としてついていたハエドゥイー族の有力者エポレドリクスはハエドゥイー族の陰謀を聞きつけると、カエサルに忠実に報告し、ハエドゥイー族がローマとの友情を失わないよう頼んだ。
・しかし、結局ハエドゥイー族はウェルキンゲトリクス側につき、アレシアの戦いではローマに対して旗揚げした。
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コイン詳細、掲載写真撮影:中村めぐみ