古代ギリシャコイン リディア王国 金貨 世界最古のコイン 前610-561年発行

古代ギリシャコイン リディア王国 金貨 世界最古のコイン 前610-561年発行
古代ギリシャコイン リディア王国 エレクトラム金貨 3分の1スタテル金貨

前610-561年発行(アリュアッテス王の時代)

オモテ:獅子

ウラ:パンチ打ち込み

サイズ:4,69g

<世界最古のコイン、リディア>

イオニア地方すぐ隣のリディア王国が、初めて図像を表したコインを発行した。
リディア王国は小さな楕円の金塊に、王のシンボルである獅子を刻んだのである。
これ以降コインから図像が失われたことはない。
人から人へとコインが渡る時、人は否応なしに、そのコインに刻まれた図像を見る。
図像が何かのシンボルであれば人はそれを記憶に刷り込んでいく。
コインに王のシンボルを刻むことによって、人の記憶を支配することを考え出したのが、リディア王国であった。
コインによって主権は王にあることを民に伝達したのである。

また、コインの誕生には、古代人の死生観、それに伴う供犠が大きく関わっている。
何よりもまず古代人は、全ての生物の命は神からの預かりものであると考えていた。
つまり、人は命を神から借り受けたため、一生、神に生に変わる何かを返済し続けねばならないのである。
生命の債務を果せたかどうかが死後の世界(神の世界)に影響すると考えていた。
この生命の債務という観念が供犠へとつながったのである。
代表的な供犠が生贄である。
人は神に対して、人間を始め、動物、そして様々な品々を捧げた。
奉納された壺に入った93枚のリディアのコインがエフェソスのアルテミス神殿の基礎から見つかったことは、コインと供犠の深い関係を示唆する。

様々な供犠を取り仕切るのは司祭である。司祭は神と人をつなぐ役割を担う。つまり神から人へ、人から神への意思を伝達する仲介人である。
それゆえ、古代では自然と司祭がその社会の王となった。日本の例では邪馬台国の卑弥呼が理解しやすい。

供犠という行為が基盤であった古代世界、前7世紀のリディア王国は、コインに王のシンボルを刻むことによって、神から人、人から神という伝達の中に、第三者の意思(リディア王の場合は王権)を介在できることに気づいたのである。

また、最初のコインが金によって作られたという事実は、コインが王権社会の産物であることを物語る。
永遠に錆びることなく輝き続ける金は、太陽を彷彿させる。それゆえ金は王権を象徴するものとして、冠、腕輪、馬具などに使われてきた権力者の持ち物であった。

王国にとって幸運にも、リディアが金鉱豊かな土地であったことを、前5世紀の歴史家ヘロドトスは伝えている。
トモロス山から流れるパトロクス川の砂金によって、エレクトラムと呼ばれる自然合金(金に銀が含まれた琥珀金)が取れたのである。
それゆえリディアの金貨はエレクトラムと呼ばれた。
エレクトラムは古代ギリシア語、ἤλεκτρον (elector)で「輝くもの」を意味し、太陽を表すhelioに由来する。
英語electric(電気)の語源でもある。
コインが古代にエレクトラム金貨からスタートし、現代には電子マネーという形態が誕生したという事実は、貨幣が光のような存在であることを示唆しているのかもしれない。
コイン発行時の歴史背景は、下の「コインで見る、古代ローマ史年表」をクリックしてご覧ください。





コイン詳細、掲載写真撮影:中村めぐみ