古代コイン、今日の1枚

アルテミス信仰を象徴するエフェソスの蜂のコイン

本日は、まるで昆虫標本のような、蜂の全身が刻まれたエフェソスの銀貨をご紹介します。

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このドラクマ銀貨はイオニア地方の都市エフェソスで前202-150年頃に発行されたものです。
エフェソスは現トルコ、エーゲ地方イズミルに位置し、
前10世紀頃にアッティカやイオニアの入植者たちによって建設され、
他のイオニア都市と共に小アジア内陸との貿易により栄えた都市でした。

エフェソスは古代の7不思議に数えられるアルテミス神殿があったことが特に有名です。
アルテミス神殿の美しさは格別で、各地からの訪問者が後を絶たない名所でしたが、
前356年にヘロストラトスという若者がエフェソスのアルテミス神殿を放火。
その理由は恐るべきことに、有名なエフェソスのアルテミス神殿を燃やせば、自分の名が歴史に残るという異常な考えでした。


エフェソスのコインになぜ蜂が刻まれているのかというと、蜂はエフェソスではアルテミスのシンボルであったからです。
蜂の頭部の横にはエフェソスを表すEΦの文字が刻まれています。
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アルテミス神はアポロンの双子の妹で、狩猟と豊穣の女神です。
エフェソスのアルテミスはギリシアのアルテミスに見られる処女性とは対照的に、豊穣多産を象徴する多数の乳房を持っていました。
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エフェソスのアルテミス像

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エフェソス像の下部には蜂が刻まている。

そして、このコインのウラ面にはやはりアルテミス神の象徴である牡鹿、その背後にヤシの木が刻まれている。
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ヤシの木はアルテミス神が生まれたとされるデロス島のヤシの木を表していると思われます。

コインの両面ともに、アルテミス神にまつわる意匠が取り入れられたエフェソスの銀貨。
エフェソスでのアルテミス信仰が根強いものであったことが伺える貴重な一枚です。