古代コイン、今日の1枚

パリ、シテ島の古代ローマ遺跡クリプト・アルケオロジックでのコインの企画展「権力者の金 L'or du pouvoir」

本日は以前行って参りましたフランス・パリ、シテ島の地下遺跡、Paris Crypte Archéologiqueで開催中の展示L'or du pouvoirをご紹介します。
この展示名L'or du povoirは日本語に訳すと「権力者の金」という意。
どの時代も権力者の象徴と言えば金、ゴールドとあって、金貨が展示のメインテーマとなっています。
古代ケルト時代に始まり古代ローマ時代までにパリを治めていた権力者が発行した金貨を中心に、そしてパリから出土した帝政ローマ期の遺物が展示された素晴らしい展示です。

今まで古代パリのパリシ―族の金貨など古代パリ関連の資料は、パリの歴史美術館であるカルナヴァレ美術館で見ることができました。(しかしカルナヴァレ美術館は日によって開いている展示室が違い、古代パリ関連の展示室が開いているかどうか確認が必要という非常に不便な状況でした。またパリシー族の金貨は常設展示ではありませんでした。)

2016年よりカルナヴァレ美術館が2019年までの大規模改修で休館中となったため、特別展示として古代パリ関連の資料の一部ををノートルダム寺院前の広場の地下Crypte Archéologiqueで特別展示としてみることができるようになりました!

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展示のポスターはシテ島地下遺跡クリプト・アルケオロジックから金貨肖像のアントニヌス・ピウスの顔が覗いている面白いデザイン。 

Crypte Archéologique クリプト・アルケオロジックは古代ローマ帝政時代の小さな個人宅の浴場跡やゲルマン人の侵入を防ぐために308年に建てられ始めたパリの城壁の遺構を見ることができる、パリの古代遺跡スポットです。
パリのシテ島でローマ時代の遺跡がみれるだけでも興奮するのに、今回はその遺跡の中で貨幣の展示も見られることにさらに興奮でした。

クリプト・アルケオロジックの遺跡のご紹介はまたの機会として、今回は企画展示のコインの中から数枚をピックアップしてご紹介したいと思います。

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まず最初に展示されていたのが、やはり誰もが知っている歴史人物、ユリウス・カエサル肖像のアウレウス金貨。
中央に本物のコインが飾られ、上にはオモテ・ウラの拡大写真。下にはコインの説明です。以下筆者翻訳。
オクタウィアヌスとユリウスカエサルのアウレウス金貨
前43年、ガリア・キサルピナ発行
プティ・パレ所蔵
コインオモテ面:C CAESAR COS PONT AVG(ガイウス・カエサル・コンスル・ポンティフェクス・アウグストゥス) オクタウィアヌスの肖像
コインウラ面:CAEAR DICT PERP PONT MAX(カエサル・終身独裁官・ポンティフェクス・マキシムス) ユリウス・カエサルの肖像
共和政期末、政界の強者あったカエサルは都市保管の貴金属、ガリア戦争で強奪した金属から貨幣(アウレウス金貨)発行を行った。ユリウス・カエサルは前44年に暗殺される少し前に、それまでは禁止されていたコインに生者の肖像を刻む許可を元老院から得た。
カエサルは姪の子であったオクタウィアヌスを養子とし、オクタウィアヌスはガイウス・ユリウス・カエサルと名乗った。
前43年の8月、オクタウィアヌスは強制的に元老院に自身をコンスル職に任命させた。
オクタウィアヌスは政治的正当性を強化するために、このアウレウス金貨にユリウス・カエサルの肖像を刻み発行した。

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そしてカエサルの肖像の金貨の隣には最初のパリの貨幣、古代ケルト人・パリシイ族の3枚の金貨の展示がされていました。
ローマ支配以前のパリには、パリシイ族が居住していたことがカエサルの記した『ガリア戦記』からもわかっており、さらに『ガリア戦記』にはパリシイ族が前52年にルテキア(パリの古代名)の戦いでカエサル軍に陥落させられる様が詳しく記されています。
そのカエサルの肖像のコインとパリシイ族の金貨が並んだ展示に大感喜しました。

3枚のパリシイ族の金貨下の説明の翻訳は以下。
スタテル金貨
およそ前70年発行
カルナヴァレ美術館所蔵
カルナヴァレ美術館の6枚のパリシー族の金貨はセーヌ川の浚渫で発見されたものである。
オモテ面は顔を右に向けた人の肖像である。しかしながら肖像の目は正面を向いている。
ウラ面には左向きの様式化された後脚で立ち上がる馬が確認できる。
ウラ面はガリア社会においての馬の重要さを証明している。

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上3枚のパリシイ族の金貨の拡大写真
パリシ族の金貨は7つのタイプに分類されていますが、その中の3つのタイプが展示されていました。
パリシイ族のコインのタイプについて詳しくは当ギャラリーのHPの以下のページをご覧ください。
パリシイ族の貨幣史

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パリで出土したケルト時代の剣やフィブラ(服を止めるブローチ)の展示もあります。

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パリシイ族金貨の肖像の詳しい説明も展示されていいました。
上の章から訳しました。
①パリシイ族のスタテル金貨は前100-前50年に打刻された貨幣である。
 ガリアの金貨の中で最も美しいものの一つで、この民族がイル・ドゥ・フランス地方に居住していたことを証明する希少な資料であ る。これらのスタテル金貨はガリアの貨幣彫刻師の洗練さと才能を明らかにしている。

②右向きの肖像はギリシャの貨幣を原型としている。
 様式化された肖像は解体された形の組み合わせで形成されている。
 キュビズムの分解手法のように、鼻は直線、口は半分の輪、目は頭が横向きにもかかわらず正面を向いた円で小環で表されてい る。

③ギリシャコインの原型で、髪の毛の束と月桂冠の葉が重なり合ってる様は、弓型の円や渦巻に置き換え表されている。

④背景を埋めるように、肖像の周りには様々なモチーフが散りばめられている。
 これらはガリア人のシンボルである。
 顔の下には周りの縁が球状になった車輪。口の前には反対を向いたS字と第二の目のような小環。額の前には小球。
 数々のパリシイ族の曲線装飾のレパートリーには車輪、S字、螺旋、トリスケル、巻葉装飾がある。


以上長くなりましたが、この展示で特に感銘したコインを選んで紹介させていただきました。

コインの展示はさらにローマの最盛期アントニヌス朝、続いてパリに居住していたローマ皇帝ユリアヌスの金貨などの展示が続き、非常に見応えのある展示となっています。
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2017年9月現在もこの展示の終了日は未定です。
2019年のカルナヴァレ美術館の改修工事終了近くまで続くと思われるので、パリに行かれる方は、シテ島という好立地な場所でもありますので、ぜひ足を運ばれることをお勧め致します。